『あんのこと』のあらすじ、感想!2024年大ブレイクの河合優実さん主演!
2024年、「不適切にもほどがある!」で大ブレイクし、
その後も勢いが止まらない河合優実さんの主演作品『あんのこと』をご紹介します!
実話ベースのとてもツラく悲しいお話です。
守ってくれるべき人が最大の敵である人生。
入江監督は、杏のモデルとなったハナさんへの鎮魂の意を込めて
この映画を作ったそうです。
社会派ドラマではあるが、尖っているわけではない。
ただただ、壮絶な人生を生きた女性がいたんだ・・・
杏(ハナさん)は実際にこの世界にいたんだよ。
ということを静かに押し付けることなく伝えてくる・・・
現実として。
映画は尖ってないけど、観る側が観終わってからどんどん自分の中で
尖らせていく。
とても考えさせられる映画です。
作品情報
タイトル あんのこと
時間 1時間53分
公開日 2024年6月7日
ジャンル ヒューマンドラマ
監督 入江悠 (SR サイタマノラッパーシリーズ、AI崩壊)
脚本 入江悠
配給 キノフィルムズ
あらすじ
幼い頃から母親による虐待を受けていた杏の人生は壮絶なものだった。
小4で不登校になり12歳のときには母親から売春をさせられていた。
中学は5日で行かなくなった。16歳で客に薬物を勧められ薬物中毒になった。
ある日、客が薬物の過剰摂取で倒れてしまい、一緒にいた杏は覚醒剤使用容疑で捕まってしまう。
そのときに多々羅というちょっと変わった刑事に出会う。
親身になって自分を支援してくれる多々羅に、杏は徐々に心をひらいていく。
仕事も決まり、夜間中学校にも通い始め、母親から逃げシェルターに住むことになり良い方向に向かいはじめる。
しかし新型コロナウィルスの出現によって歯車が狂っていく・・・。
キャスト
河合優実(香川杏 役)
役柄
幼い頃から母親からひどい虐待を受けてきたが、とても心優しい女の子。
多々羅刑事や桐野記者に支援してもらって、将来に希望を持つように。
子どもの時に守ってくれた大好きなおばあちゃんの介護ができるように介護施設で働きたいと思っている。
- 生年月日 2000年12月19日
- 出身地 東京都
- 身長 166cm
- 事務所 鈍牛倶楽部
テレビドラマ 不適切にもほどがある!
RoOT/ルート
映画 サマーフィルムにのって
ナミビアの砂漠
八犬伝
佐藤二朗(多々羅保 役)
役柄
変な刑事。ヨガ大好き。
サルベージ赤羽という薬物更生者の自助グループを主催している。
- 生年月日 1969年5月7日
- 出身地 愛知県
- 身長 181cm
- 事務所 フロム・ファーストプロダクション
テレビドラマ 今日から俺は!!
幼獣マメシバシリーズ
神の舌を持つ男
映画 さがす
変な家
稲垣吾郎(桐野達樹 役)
役柄
サルベージ赤羽を取材する週刊誌の記者。
介護職を探す杏に、知り合いが経営する介護施設を紹介する。
- 生年月日 1973年12月8日
- 出身地 東京都
- 身長 176cm
- 事務所 CULEN
テレビドラマ ブスの瞳に恋してる
佐々木夫妻の仁義なき戦い
映画 半世界
ばるぼら
正欲
河井青葉(香川春海 役)
役柄
杏の母親。嵐のように大暴れして杏を苦しめる。
杏を幼い頃から虐待し、杏を“ママ”と呼んで金銭的に依存している。
広岡由里子(香川恵美子 役)
役柄
杏の祖母。足が悪い。
幼い頃の杏を春海の虐待からかばっていたが、現在は見てるだけ。
早見あかり(三隅紗良 役)
役割
杏が住むシェルターの隣人。幼い子ども(隼人)を育てるシングルマザー。
いきなり隼人を杏に預けて姿を消した。
- 血がつながった我が子であるのに、虐待を続ける親
- 孫がひどい目にあっているのに守ることの出来ない祖母
- いい人そうに見えて、裏では性欲に抗えない刑事
- いい人そうに見えて、助け方が中途半端な記者
- シェルターの住民はみんな相当の事情があるのはわかっているだろうによく知らない隣人に幼い我が子を1週間も預けていってしまう母親
なんとも胸くそな人間たちが杏の更生を妨げます。
感想(ネタバレなし)
河合優実さんの演技がすごすぎて、グッと心臓をわしづかみにされます。
杏の表情、杏の笑顔、杏の苦痛、すべてが頭から離れません。
河合優実さんの杏は、真摯にモデルとなったハナさんに向き合って
役作りをした結果なのでしょう。
河合優実さんは、166センチ身長があるらしいけど、なぜか常に小さく見えました。
成人しているなら、母親より力も強くなってるだろうし、
やり返そうと思ったら、やり返せたんじゃないか?と思うんですが、
杏はあまり強くやり返しません。
腐っても母親やから?それとも諦め?
娘のことをママ呼びする母親なんて、気持ち悪くて仕方ないけど。
完全に突き放せない。これは親子の血の繋がりのせいなのでしょうか。
親に虐待される人生しか知らない子の行動?
客は、幼い子が売春していることに関し人としてなんとも思わないの?
誰も助けようとしてくれないの?
そもそも買春する人はそんな良心を持ち合わせていないの?
小学校の先生は何の手も打てなかったの?
家庭の現状を把握できてなかったの?
疑問がどんどん湧いてくる。
なんだ、この世の中。これが日本の現状?
救いはないの?
頭の中をぐるぐると疑問がうずまき、胸が締め付けられました。
感想(ネタバレ含みます)
杏が、すば抜けて良い子すぎる。優しすぎる。
もっとワガママに生きれたら、もっと自己中やったらこんな最期にはならんかったかも?
という思いが拭えない。
あんな母親、ぶっ飛ばしたらよかったのに。
自分の娘を“ママ”呼びするとかありえん!
自分のほうが世話してもらう存在やというアピール?甘えてんの?
なんかわからんけど、気持ち悪い。
あの母親育てたのは、あの祖母?
足が悪いのはわかるけど、あんなに孫のこと守ってあげられへんもんなん?
幼い頃に守ってくれたからおばあちゃんは大好きって杏ちゃん言うてるけど、
いやいや、守れてない。
杏には嬉しかった記憶がそのくらいしかないのかもしれない。
お父さんはどこ行ってん。死別か、離婚か、そもそも結婚してないんか。
もうホンマ腹立つ。
登場人物、だいたい胸クソなんやけど、2回目の就職先の所長さん(?)
がすごくいい人!
一番いい人やと思う。
機能不全の家庭に育ち、薬物、売春の常習者である杏に、
「なんかダメだったら、そのときは一緒に考えたらいいよ」
あかんかったらやめてもらうじゃないねん。
「一緒に考えよう。」って言ってくれて、
杏の腕のリストカットの痕をみて、
「切りたくなったら足のほうがいいね。利用者のみなさんがびっくりしないように」ってっサラッと言っちゃう。
リストカットをした杏を否定することなく、受け入れてくれている。
母親が、怒鳴り込んできたときも杏に温かい言葉をかけてくれてる。
めちゃくちゃいい人。
コロナ禍にならずにこの施設でずっと働けてたら、多々羅刑事が逮捕されても
なんとか乗り切れたんじゃないかな、と思う。
ホンマ、悔やまれる。
コロナが流行し人とのつながりが切れてしまった杏にとって、
シェルターの隣人からの突然の子ども預かりは、戸惑いながらも、
再びつながった糸を大切にしたい気持ちがあったのかも。
せっかくシェルターに入って新しい生活を歩み始めた杏やったのに、
一番見つかってはならん、母親に見つかってしまったのは
とんでもない運命のいたずらや。
いや、意地悪や。相当悪意がある意地悪。
祖母のことを引き合いに出され、隼人とともに実家に戻る杏。
バスの中で、杏は何を考えてたんかな。
その表情は、杏のこの先を想像しこちら側を不安にさせるのに充分なものやった。
搾取ばかりする母親によって隼人を失い実家を跡にした杏は、
最初の頃の杏の表情に戻ってしまってた。
ここからの杏は、絶望の淵にぐんぐん堕ちていく。
河合優実さんの演技は杏の絶望をこれでもかとみせつけてくる。
クスリをやってしまって、○が続いていた日記に○をつけられなくなり
思わず火を付けてしまうが、ある1ページだけは残す杏。
それは、隼人が食べられないものがメモしてあったページだった。
杏にとって隼人は、コロナ禍や、多々羅の逮捕で人との繋がりがなくなった
生活の中の生きる糧となっていたのだろう。
それは部屋の中のおもちゃの多さからもうかがえる。
杏が死んだのは、それまで積み上げてきたものを自分で壊してしまった自責の念だという多々羅。
確かに。
そして、何度も何度も絶望しかみせない母親がいる人生に疲れたのかもしれない。
多々羅が何度も何度も「彼女はクスリをやめられていたんです」と
苦しげに涙ながらに語っていたのは、心の中で自分がこんな罪を犯してなければ、
杏のそばにいることができていれば救うことが出来たはずだ。という自責の念からの言葉かなと感じた。
杏は、周りに優しすぎたと思う。
母親に搾取されるばかりの人生で、無意識に自分の気持ちを置いてけぼりにするようになったのかな。
実話が基になっているだけに、なんともやりきれない気持ちが拭えない作品でした。
最後に
母親から虐待を受け壮絶な人生をおくっていた彼女の存在は
数年前まではこの日本に確実に息づいていた。
そして今、その存在は映画の中に生きることになった。
彼女の最期はこれしかなかったのか。
それは、あまりにも絶望的すぎる。
でもたぶん今も日本の何処かに“杏”のような子が
存在しているんやろう。
そう思うとなんとも切ない気持ちになる。
心が不安定なときにはさらに落ち込むことになるかもしれないので
おすすめできませんが、一度は観てほしい映画だなと思いました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!